■携帯電脳遊戯最強伝説 符咒バトラー壬生!
  第5話「あ」
2006 the reverse side of a hanging scroll : recharge


 

 ―――新宿区真神学園。

「とうとう来てしまった……」

 真神学園の校門の前で、壬生は1つ深呼吸した。
 拳武館の館長室で鳴瀧との決着をつけ、その足で真っ直ぐここへとやってきた。
 放課後の誰もいない校庭に、ぴりぴりとした殺気を肌で感じている。
 符咒バトルの終着駅へと、彼は踏み込んだのだ。
「だけど、もう龍麻も帰ったかも……」
 それは当然の疑問だった。
 ここに来るまで気づかなかったのもおかしい。
 部活の無い一般生徒はとうに下校している時間だ。
「しかたない。とりあえず、校門に落書きでもして帰ろう」
 壬生は常に持ち歩いているラッカースプレーを取り出して、学校の門に『符咒罵賭羅亜 参上』と書き殴った。
 そのとき!

「コラ! そこで何してんだ!」

 突如、若い女生徒の声が壬生の耳朶を叩いた。
 慌ててラッカースプレーを隠して振り返った先には、桜井小蒔、醍醐雄矢、美里葵の3人が立っているではないか。
「いえ、僕は、その、なんていうか、大人達に“反抗的”という分かり切った言葉で僕たちのことを理解したつもりになって欲しくないという気持ちを、反抗的な行動で示そうと思って……」
 珍しく動揺してしどろもどろの壬生に、3人は冷たい視線を降り注ぐ。
「とにかく、これは真神への挑戦状と受け取った。いいだろう。体育館裏に来い」
 バキバキと拳を鳴らす醍醐と鋭い視線を送る小蒔。
 そして涼しい顔をして立っている美里が、なぜか一番怖かった。
「誤解です。まずは話し合うべきです」
「言い逃れをしようとしても無駄だ。俺たちは最初からお前を見ていたからな」
「君が『とうとう来てしまった……』って呟いているところからだよ!」
「えッ……!?」
 だったら声くらい掛けてくれてもいいのに。
 友達だと思っていた仲間が、意外と自分を遠巻きに見ていることに気づかされてしまった。そのことがショックだった。

「ちょっと待って」
 その時、美里が2人を止めた。そして壬生の落書きを示していう。
「この落書き……『ふじゅばとらあ』と書いてあるのかしら?」
「「!?」」
 その言葉を聞いた途端、醍醐と小蒔の表情が変わった。
 壬生は唇を噛む。こんなに早く自分の正体に気づかれるとは、符咒バトラーとして一生の不覚。絶体絶命のピンチ!

「それとも『ふしゅまかけらあ』かしら?」
「そうです。そう書きました」
「なんだそうか」
「もう、びっくりさせないでよー」
「うふふ。壬生君ったら」
 なごやかな空気が4人を包んだ。もうさっきまでの殺伐とした空気はない。
 それはあくまで仲良し高校生たちの団らんの光景だった。
「まったく、お前が符咒バトラーだったら俺たち3人でボコボコにしなくてはならないところだったぞ」
「ホントホント、たとえ友達でも容赦しないところだよ」
「そうよね。逆に知り合いだからこそ遠慮はいらないって感じだったから」
「やれやれ。そんなわけないじゃないですか」
「あはははは」
「うふふふ」
「あぁ、そうそう、それじゃ僕は仕事の途中だったので―――」

 壬生がその場を離れようとした、その時。

「助けにきたぞ、壬生!」
「やれやれ、どうして僕が壬生君なんかの手伝いをしなきゃならないんだい?」
「壬生先輩、義によって助太刀します!」

 颯爽と、紫暮、如月、霧島の3人が現れた。
 もちろん壬生が呼んだわけでもなかった。

「え?」
 ぽかーんとする壬生に熱く3人は語りかける。
「水臭いじゃないか、壬生! 符咒バトルで龍麻と決着をつけるのだろう! 俺たちにも手伝わせろ!」
「ふん、僕は君なんかやられちゃえばいいと思うんだけどね。紫暮君がしつこくて」
「僕は……僕は今でもあなたのしたことは許せない! だけど、あなたがそこまでして目指したものが何なのかこの目で確かめないと気が済みませんから!」

 普通ならば、ここは熱く感動する場面だったのだろう。
 だが、この3人は完全に空気を読み違えている。今はかつてのライバルが手を取り強敵を打ち倒す場面ではない。
 尻尾を巻いて逃げ出そうとしていたところだったのに───。

「……壬生」

 醍醐の声が低くなった。
 小蒔の視線が痛くなった。
 そして涼しい顔をして立っている美里が、なぜか一番怖かった。

「そういうことか……お前も龍麻が目当てだったんだな」
「ボクたちを騙そうとしたんだね。もう許さないよ」
「うふふ。なんだかワクワクしてきたわ」
 やるしかない―――。
 壬生は瞬時にそう判断した。
 ただし、戦うのは自分じゃない。こんな事態になったのは誰のせいなのか身をもって彼ら知ってもらおう。
「いいでしょう。最初から僕は逃げも隠れもするつもりはない。だが、今は邪魔者が多すぎる」
 邪魔者、と紫暮たち3人を指差して壬生は言った。
 冷酷なる符咒バトラーだった。
「僕が相手をするのはあくまでも強い者だけだ。この3人を符咒バトルで倒した者と戦いましょう」
「上等だ。かかってこい、そこの3人!」
「ひーちゃんには会わせないよ!」
「戦いは何も生みはしないのに……もう争いは嫌なの」

 そして邪魔者扱いされていることに気づかない熱い3人もそれに応える。

「よし、俺が醍醐をやる! 後は任せたぞ!」
「では僕は桜井さんだ! 後は任せた!」
「じゃあ僕が美里先輩ですね! なぜか一番怖そうな人を僕に任せるなんて、ひどい先輩たちだ!」

 こうして無事に壬生は真神学園に潜入した。
 あの3人にはたいして期待はしていないが、時間稼ぎくらいにはなるだろうと壬生は思った。
 なるといいなあと壬生は思った。

「3−C……ここか」

 龍麻のクラスを前にして、ゴクリと壬生は喉を鳴らした。
 長い戦いがこの舞台で終わろうとしている。
 挫折を味わったこともある。逃げ出してしまったこともある。
 だが、壬生の符咒バトラーとしての頂点を極めるべき戦場まで、とうとう辿り着いたのだ。
 今までの辛いバトルが脳裏を過ぎる。
 何も知らない霧島を赤子の手を捻るように潰したこと。
 因縁をつけて如月の店から大量の符咒封録を奪ったこと。
 うっとうしく付きまとう紫暮を大量出血にまで追い込んだこと。
 卑劣な館長を卑劣な手でやり返したこと。
 全てはこのバトルのために―――。そして、開いた扉の先には。


 ―――夕暮れの教室。


 その窓際の机の上に腰掛け、夕焼け空を見上げる一人の少年がいた。

「……龍麻は、どこだ?」

 壬生はその少年に問い掛ける。

「龍麻……? ここにはいねぇよ」

 その少年、蓬莱寺京一は窓の外に視線を向けたまま答えた。

「ここにいないのなら、どこにいるんだい?」
「それ聞いてどうするんだよ、壬生?」
 京一は自分の方を振り返りもしない。ただ面倒くさげに問うだけだ。
「僕の符咒バトルに、終止符を打つ」
「くだらねぇ。どいつもこいつも」
「君は符咒をやらないのか?」
「……興味ねぇな。あんなもん、ガキの遊びだろ」
 はき捨てるように言う京一の表情は、壬生の位置からは見えない。
 ただ、その言葉には符咒に対する憎しみすら感じさせる。
「どうして君たちは龍麻を隠すんだい?」
「隠す? 隠しちゃいねぇさ。ただ、今のアイツに会ってもしょうがねぇって言ってるだけだ」
「しょうがないかどうかは、僕が決めるよ。龍麻のところに案内してくれないか?」
 沈黙。
「……どうしてだい?」
 ただ沈黙だけを京一は返す。
「龍麻が一体どうしたっていうんだ? たかがゲームで強くなっただけだろう? 何をそんなに恐れているのか、僕には分からない」
「……うるせぇよ」
「人間がそう簡単に変わるものじゃないってことを、僕はよく知っている。何があろうと龍麻は龍麻だと思っている。僕たちは……龍麻の友達じゃないか」
「ダチなんかじゃねぇよ、あんなヤツ!」

 ピシリと空気が凍った。
 はっきりと京一は口にしたのだ。
 あれほど親友であると、相棒であると公言してはばからなかった龍麻との友情の破綻を。
「……何があった?」
 またも沈黙。肝心なところでいつも京一は口を閉ざす。
「言うんだ、京一君。龍麻に何があったんだ?」
「しつこい野郎だな。いい加減にしねぇと、ぶっ飛ばすぞ」
「……君が口を割らないのなら、その前に僕が君を叩きのめすよ」
「へぇ。拳武館の犬にしちゃ、上等の口を利くじゃねぇか」
「口だけかどうか、試してみるかい?」
 すらりとGBAが壬生の胸ポケットから滑り出る。
 2人の間に張り詰める空気。ゆっくりと、京一が初めて壬生を振り返る。
「いいぜ……そんなに相手して欲しいんなら、相手になってやるよ」
 荒んだ目。あの地下鉄のホームで初めて会った時の、輝くような瞳はそこになかった。
 何かがあった。京一や醍醐や、小蒔や美里をここまで変えた何かが。
 そしてそれは……龍麻を中心に起こっていることだ。
「君のGBAを出しなよ」
 謎に近づくには、まず目の前の敵を倒すこと。
 今までにはない殺気を感じさせるこの京一を倒せば、きっと何かが掴めるはず。
 壬生はそう睨んでいた。しかし京一の様子はおかしい。
「プッ……ハハッ、何言ってんだよ?」
 何が可笑しいのか、京一は笑う。そこに狂気じみたものを感じて壬生は背筋を凍らせる。
「そんなおもちゃで何ができるってんだよ! 俺の得物は、いつだってコレだけだぜ!」
 京一は木刀をなぎ払った。剣圧が突風となって壬生を襲う。
「何をする!?」
 とっさに体を横にずらして剣筋を交わした。しかし、次に地を這うように流した木刀は机や椅子を壬生に向けて飛ばした。
「クッ……!」
 それを上体をそらして避けた。地を蹴り、バック宙転で体勢を立て直し、距離を稼いだ壬生が構えようとする時、しかし京一はすでに目の前にまで迫っている。
「お望みどおり、ぶっ飛ばしてやらぁ!」
「!?」
 京一の剣速は、まさに音をも断ち切るが如し。
 だがその絶対絶命の間合いの中で、壬生の本能が爆発する。
 全神経は戦闘モードに移行。無意識のまま肉体は反応する。つま先が床を蹴り上げ、右足が京一の木刀を突き上げる。硬く弾く音。そのままの速度で壬生の上体は低空で回転し着地する。
 京一の圧倒的な攻撃速度。壬生の超反応。あり得ない角度からの逆襲と、それを受けてなお、反射神経と柔軟な握力で木刀にヒビひとつ入れさせない京一。
 十代の少年たちが見せるレベルの戦いではなかった。見る者のいない教室が、息を呑むように床を震わせ、静かに空気の温度を下げた。

「やるじゃねぇか、壬生──。そういや、俺だけはお前とやったことなかったんだっけな」
「いや、待ってください。僕はこのような格闘漫画みたいな展開は望んではいない。今の僕は符咒バトラーなんですから!」
「はっ、何が符咒だよ。男が決着つけるのに必要なのは、そんなゲーム機じゃねぇだろうが!」
「!?」
 言われてみれば確かに京一の言うとおりだ。GBAで戦う必然性はまるでなかった。むしろ必然性についての説明を今までずっと避けてきた。
 だが、今さらそんなことを言われたら今までの戦いが無駄になる。
「今さらそんなことを言われれば今までの戦いが無駄になる!」
「知ったことかよ!」
「!?」
 確かに言われてみればそうだ。京一の知ったことではなかった。
「だが、物事にはそれまでの流れと空気というものがある! 大真面目に木刀や拳で戦って、決着つけばそれでいいというものではない!」
「御託は十分だ! 覚悟しな!」
 京一の木刀は教室にあるもの全てをなぎ払って襲い掛かる。
 散乱する机と椅子。陰の技を持つ壬生に取って足場を潰されるのは致命的に不利。
 京一が非凡な剣士であり、また壬生にまだ戦闘の心構えが無かったとはいえ、このような状況に追い込まれるのは、拳武館の壬生紅葉にとってあるまじき失態であった。
 次々に襲い掛かる木刀や、飛んでくる机をかわすので精一杯の壬生。
 しかし、それもすぐに限界がくる。
「!? ―――しまった!」
 潰れた机のパイプに脚を取られた。バランスを失って体勢を崩した壬生に京一の木刀が大上段に襲ってくる。
(こんなところで……!)
 為す術を失い、夢中で両手で頭を庇う。だが京一の木刀はその程度で庇えるものではないだろう。
(ここまでか!?)
 諦めと悔しさが交互に壬生の胸に去来する。
 せめて、敗れる時はGBAで思ってこの地を踏んだというのに―――。

 だが、降り注ぐ剣圧はそこで止まった。目を開ければ、GBAの画面の前で踏みとどまる京一の木刀。
 そして、泣き出しそうな京一の顔。
「……ちきしょう!」
 京一の木刀は、そのまま真横に薙いでロッカーを叩き潰した。
「ちきしょう! ちきしょう! ちきしょう!」
 何があったというのか、壬生には分からない。だがその京一の肩が震えているのを見た。
「……話してくれないか?」
 もう京一に殺気はない。立ち上がって制服に付いた埃を払い、壬生は京一に近づいた。
「龍麻に何があった? 君たちは何を隠している?」
「…………」
「京一君」

「──はじめは、俺たちも一緒に符咒封録を楽しんでいたんだ」
 静かに、京一は語り始めた。
 悲しき男の物語を。
「アイツも最初のうちは、せいぜい俺たちと同じレベルで楽しく戦っていたんだ。ただの休み時間の暇つぶし。それが俺たちにとっての符咒バトルだったんだ」
「ええ」
「だけど、いつだったかな……ある日、たまたま俺が龍麻に連勝して、つい調子に乗ってこんなことを言っちまったんだ」
「なんて?」
「『お前、主人公のくせに弱いじゃん』ってな。ただの冗談のつもりだったんだぜ」
「龍麻は弱かったのか……」
「そして、次の日からアイツの姿は消えた。『もう一度あの世界でやり直してくる』って置手紙を残して」
「自由自在に行けるんだ……」
「それから数日してヤツは帰ってきた。生まれ変わってな」
「生まれ変わる?」
「符咒の───、化け物になったのさ」
「!?」
「その日から、俺はGBAを止めた。アイツとはもう戦いたくなかった。みんながGBAを止めればアイツも目を覚ますかと思ったんだが、そうじゃなかった。アイツはもう身も心も符咒に取り憑かれちまったんだ」
「いったい……?」
「もう何もかも手遅れだったのさ。かつてのアイツはもういない。化け物だけがここに残った。だから俺たちはアイツに近づこうとする奴らを排除しようと決めた。アイツを知っている奴らに、今のアイツを見せたくなかったから」
「何をバカな……」
「そのロッカーを開けてみな」
 京一が指したロッカーを壬生が開けてみた。
 そこから転げ落ちてきたものは……。
「!?」
 劉弦月、御門晴明、紅井猛、黒崎隼人、アラン蔵人、雨紋雷人……。
 みんな、壬生も知っている龍麻の仲間たちだ。
「誤解するなよ。俺がやったわけじゃない。みんな龍麻にやられたのさ。ほんのちょっと、符咒で遊ぼうとしただけなのによ」
「そんな……」
 どれも無残な姿だった。これを全て龍麻がやったというなら、なんと非道なことだろう。
 というより、そんな彼らをロッカーに押し込めておくというのも、人道的に見てどうだろう?
 だが、そのことについて京一と論議する時間も惜しいので、壬生は黙って見ていることにした。
「龍麻に会いたいだって? これを見てそう言うなら俺はもう止めない。お前が決めな」
 沈黙。先ほどまでの熱い決意が揺らぐのを壬生は感じていた。
 龍麻が仲間に対してここまでやるとは。
 いったい何が彼をそんなにも変えてしまったのか。
 得たいの知れぬ恐怖が壬生にのしかかる。だが、ここまできて引き返すのは、符咒バトラーの生き方に反する。
 進むか退くか。最後に結論を出すのは己の覚悟ひとつだ。

「教えてください。龍麻は、どこにいるんですか?」
「…………」
「さあ、教えてください!」
「………」

 京一は長い沈黙の後、ぼそりと呟いた。

「……さっき、ちょっくら便所って言ってたから……」
「あァ、トイレですか───」


 そうして、壬生が教室から出るのを、京一は見送ることができなかった。
 かすかな痛みが胸に走る。
「ごめんな……ひーちゃん……」
 締め付けるの後悔。自分自身の不甲斐なさ。壬生への敗北感。

 あのときの自分には、今の壬生のように、真っ直ぐに龍麻を追うことができなかった───。

 

 ―――トイレ前。

 ゴボゴボという水の流れる音が響く中、壬生は顔をしかめて廊下で立っていた。
 もうすぐ龍麻が出てくる。待ちに待って、とうとうトイレの前でも待った最終決戦の時が訪れる。
 思えば長い道のりだった。回り道ばかりしてきた。嫌というほど回り道をした。させられた。
 だが、もうすぐ全てが終わる。ここで龍麻を倒せば名実ともに最強の符咒バトラーになれる。
 身が引き締まるような思いだ。
 ここがトイレの前だからか? いや、違う。符咒バトラーとして最高の舞台の前に立っているからだ。

 ギィ……。

 やがてトイレの扉が開かれる。
 息を呑む。
 そして目の前に現れたのは―――。

「あ」
「あ」


 ほぼ同時に驚きの声を上げた。
 現れたのは確かに龍麻だった。しかし―――。

「なんだ、壬生かー。こんなところで何やってんだよー」

 しかし、その格好は龍麻ではなかった。壬生の知っている龍麻ではなかった。
 広い肩幅にはじけそうなセーラー服。
 太い両足を除かせるスカート。
 チラリと除く逞しすぎる腹筋。
 ソックスから飛び出す脛毛。
 明らかにカツラと分かるオカッパ。
 顔に馴染んでない濃い化粧―――。

「た……龍麻?」
「おう、何してるんだよ、壬生」 
「いや、君こそなんだい? その格好は……?」
「あ、これ?」

 よくぞ聞いてくれたといわんばかり、くるりとスカートを翻す。

「見りゃ分かるだろー。女主だよ、女主。俺、2周目だからさー。うふふ」

 はにかんだ表情が、見る者に殺意を与える。
 気を狂いそうな壬生の中で、グルグルと今までの言葉が巡り始めた。


『符咒の地獄を見た』

『ヤツと戦って、精神崩壊してしまった』

『あれは悪魔だ。符咒の悪魔だ』

『符咒の……化け物になったのさ』


 ようやく壬生にも理解できた。龍麻に何があったのか。
 こみ上げる吐き気。倒れそうな眩暈。
 これが龍麻から匂ってくるのだと分かっただけで、鼻をもぎ取りたくなる甘いコロンの香り。
 これ以上の直視はまずい。そう判断した壬生が目を背けて逃げ出そうとする。
 だがそれよりも早く、龍麻が太ももを隠して悲鳴を上げた。

「ちょっ、どこ見てるんだよ! エッチ!」
「うわああああああああ!?」

 ―――符咒バトラー、失神。

 


次回予告


 決着どころか、GBAに電源を入れることすらしなかった。
 前回の予告を余裕で裏切り、しかも謝りもせず勝負は次回に持ち越す。
 はたして符咒バトラーはデビル龍麻に勝てるのか?
 そもそも勝負になるのだろうか?
 正直、もう符咒バトルとかどうでもいいかもしんない!
 こいつら、めんどくせ!

 

 次回『携帯電脳遊戯最強伝説 符咒バトラー壬生!』最終話

 「僕と、勝負するかい?」

 

 つづく!

 

 


INDEX


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