■携帯電脳遊戯最強伝説 符咒バトラー壬生!
  第3話「これだからアイドルオタクは気持ち悪いんですよ」
2006 the reverse side of a hanging scroll : recharge


 

 東京───。
 黒いコートにサングラス姿の少年が、真昼の雑踏の中で浮いていた。
 正体を隠さねばならぬ暗殺者として『周囲に溶け込む』という基本をあっさり否定する存在感の強さは、少年の生まれ持ったカリスマ性かあるいはズレた感性なのか───。
 その答えは誰も知らない。だがヒントは周りの奇異の視線の中にある。
 しかしそこから見いだす回答に少年は何の価値も見出さないだろう。それこそが符咒バトラーの悲しき性。符咒バトル以外のことに目を向けられないのだ。
 そして今日も、そんな彼の前に類友が現れようとしている。

「燃え上がれ〜ッ! 大腿筋ッ!」
「「「燃え上がれ〜ッ! 大腿筋ッ!」」」
「震えるぞ〜ッ! 腓腹筋ッ!」 
「「「震えるぞ〜ッ! 腓腹筋ッ!」」」 
「あぁ〜我ら鎧扇寺高校空手部〜♪」
「「「あぁ〜君も鎧扇寺高校空手部〜♪」」」
  
 健常な精神の持ち主なら、とても人前で口にはできないようなかけ声を唱和しながら向かってくる集団があった。
 100m先でも何者たちかわかる。壬生はさりげない風を装って無視しようとしたが、それよりも先に集団の先頭を走る男が壬生を見つけて叫んだ。
「おー! 壬生じゃないか!」
「……あぁ、紫暮さん」
 がっかりしながら壬生は愛想笑いで応える。そしてあっという間に空手着の集団に取り囲まれてしまう。
「こんなところで会えるなんて奇遇だな。あぁ、紹介しておこう。こいつらは鎧扇寺高校空手部の後輩だ」
「いえ、それは100m先からでもわかりました」という壬生の返事は、後輩たちの怒号のような挨拶にかき消された。
 あまり集団行動を取らない壬生にとって、この状況はちょっとしたプレッシャーだった。体育会系の暑苦しさに加え、紫暮の友人ということで、無意味に後輩たちの畏敬の眼差しを集めている。
 こうした周囲の人間の尊敬を自然体のままで受け止めることができる紫暮に、自分にはない人間的な大きさを見るような気がして壬生は寂しく思う。
 住む世界の違い。真っ白な空手着の集団に囲まれて、その中心で気後れを感じ入る黒ずくめの自分を滑稽に壬生は感じた。上空から見下ろせば、きっとオセロの弱い人みたいに見えるだろうと壬生は思った。

「もしくはパンダの尻のようですね、紫暮さん」
「なにが? いや……フッ、まあ、妥当な線だろうな」

 壬生の内心の動揺を読み切れない紫暮は、またクールな壬生のニヒルで知的なジョークだろうと思った。自分には縁のないオシャレさだな、と紫暮は内心で歯がみする。

 こうして二人は、互いの中に自分にはない輝きを幻視しながら不器用な友情を続けてきたのだ。

「まあ、ここで会ったのも何かの縁だ。壬生、この後なにか予定があるのか?」
「いえ、特にこれと言っては」
「それじゃ、俺たちに付き合え。武道館に行くぞ」
「武道館?」

 紫暮はニヤリと笑って「そうだ」と頷いた。

「俺たちと会えたのは運がいいぞ、壬生。なんといっても今日は特別だ。お前も武道家なら是非一緒にくるべきだ」
 そういって紫暮はお空の向こうをまぶしそうに眺める。
「全国から選ばれし武の漢(おとこ)たちが集結し、熱い魂と肉体を競わせる……。考えただけで上腕二頭筋が震えてこないか、壬生?」
「いえ、震えま───」
「そうか、お前も興味あるか。そうだろうと思った。よし、では行くぞ!」

 紫暮は全員に声をかけると、壬生を取り囲んだまま走り出した。
 少し強引というか立派な拉致行為だが、紫暮のように堂々と壬生に踏み込んでくる人間は数少ない。他人の厚意を素直に受け止めるのはまだ照れがある壬生だが、紫暮のはそんな自分の性格を見越した強引さだということを知っている。
 紫暮という人間は、武道と鍛錬ばかりの熱血男に見られがちだが、不器用ながらもこういった気遣いのできる男だ。壬生のためによかれと勧めてくれているのは本当なのだろう。
 たまには符咒のことを忘れて汗を流すのもいいか───。
 そうあきらめると壬生は苦笑を浮かべ、彼らと肩を並べて走り出す。

「暴れ出せ〜ッ! 大胸筋ッ!」
「「暴れ出せ〜ッ! 大胸筋ッ!」」」
「解き放て〜ッ! 括約筋ッ!」 
「「「解き放て〜ッ! 括約筋ッ!」」」 

 しかし距離はあけておくことにした。




───武道館

 ひとたびホールに足を踏み入れると、そこは漢(おとこ)たちの熱気と絶叫に満ちあふれる興奮の坩堝だった。

「さ〜〜〜〜やかちゃ〜〜ん!!」
 
 暑苦しい漢(おとこ)たちの汗のにおいが充満し、蛍光色のハッピやハチマキ、きらびやかな装飾を施した団扇などが跳ね回る。
 その中にぽつんと立ちつくした壬生が、ステージ上の舞園さやかとパンフレットの『舞園さやか武道館ライブ 〜物価連動国債なんて元本割れもありえるから〜』のタイトルをサングラス越しの冷淡な目で眺めていた。

「……じつは武道館と聞いたときから、こんなオチだろうとは思っていたんです」
「あぁん? なんだ壬生、聞こえないぞ! もっと大きな声で、ホラ! さ〜やかちゃ〜〜んッ!!」

 客席を見渡せば、なるほど確かにむさ苦しい漢(おとこ)たちでいっぱいだった。中には明らかにカタギじゃない連中もいた(壬生は知らないが京都で緋勇たちと戦った若頭ほか)。その連中がステージ上の少女に向かって野太い声援を送っている。
 ちょっと気が遠くなる壬生だった。

「なんだなんだ壬生、借りてきた猫のように! 野辺に咲く花のように! 今日はさやかちゃんの20枚目のシングル『国債』の発売記念ファンクラブ限定ライブなんだぞ! もっともっとテンションを上げたらどうなんだ!」
「いや、そんなイベント初めて耳にしますし、テンションの上がるタイトルでもないです」
「まったく、お前という男は! いいからお前も一緒に歌え! ♪新規国債じゃないやいやいやい借換債〜ッ♪」
「……やれやれ」

 符咒のことを忘れるどころか、自分という人間すら見失いそうになる数時間が過ぎていった。
 そして、ライブ終了後───。

「いや〜、さやかちゃんは今日も最高だったなァ、お前ら!」
「「押忍ッ!」」

 すっかり日も暮れた街。いまだ興奮覚めやらぬ空手部の面々と、疲れた顔の壬生が連れ立って歩いていた。

「おい、どうだった壬生? 来てよかっただろう! ハーッハッハッハッ!」 
「ええ、まあ、ほどほどに」

 歌のことなどよく分からない壬生は曖昧に頷くだけだった。ただ満足そうに笑う紫暮を見てると、まんざら無駄な一日ではなかったと思えてくる。
 紫暮とは趣味も考え方も違うが、その違いがお互いに良い刺激となっていた。友情というものには様々な形があるものだと、最近になって壬生も考えるようになった。
 “武”を通じての交わりが、“人”として互いの理解を深めることで、やがて互いの“武”の形も変えていく。
 師である鳴瀧と弦麻の交わりもこのようなものだったのだろうかと、壬生は見知らぬ過去に思いを馳せた。

「いや〜、それにしても騒ぎすぎたせいか、ずいぶん汗をかいてしまったな」

 そういって紫暮は部活で使っていると思われるスポーツタオルで顔を拭った。

「そうですね、僕も少し熱気に当てられたようです」

 壬生もライブ会場で入手したタオルで首を拭う。
 だがそのタオルを目にしたとき、紫暮と、空手部の面々の顔色が変わった。

「そ、そのタオルはッ!? 壬生〜〜〜ッ!?」

 ただでさえ劇画的の紫暮の顔が、劇画的な驚愕の表情に崩れる。すぐ近くに雷が落ちた。

「え? なんですかその特殊効果は?」
「おおおお、お前ッ! そのタオルを見せてみろッ!」
「これですか?」

 壬生が首にかけたタオルを広げて見せる。

「やはり間違いない! そのタオルは、いまや伝説となったさやかちゃんの幻のデビュー曲宣伝用タオルッ! まさかまだ現存するものがあったとはッ!?」
「どういうことですか?」

 壬生もそのタオルを観察してみた。いかにもお金のかかってなさそうな白い生地の一部には、これもまたお金のかかってなさそうな明朝体で曲のタイトルらしきものが印刷されていた。

   「終着駅の女」  C/W 「珍島物語」

「……あの人、演歌でデビューしてたんですか?」
「くっ、なるべくなら口外したくはなかったが、やむを得まい! そうだ。さやかちゃんは今の事務所に入る前、演歌歌手として一度デビューしているんだ!」
「へぇ」
「だが、当時さやかちゃんの師匠だったとある大物歌手が暴力団との黒い交際をマスコミに叩かれ、表舞台から姿を消した。そして後ろ盾を失う形となった可哀相なさやかちゃんは、わずかデビュー2ヶ月で事務所から解雇されてしまったんだ!」
「おやおや」
「だが、さやかちゃんは決して歌をあきらめなかった! どんな小さなイベントでも、たとえそこが路上でもさやかちゃんは歌い続けた! そしてやがて彼女の歌声は大手プロダクションの耳に止まり、アイドルとして再デビューできることになった! それが今やアイドルの頂点を極める舞園さやかちゃんの誕生だ!」
「いえ、そんなことより、このタオルに書かれている『期待の新人歌手・天童さしみ』っていうのが気になるんですが」
「言うな! それこそが知る人ぞ知る芸能界最大のタブーだ! まさか平成の歌姫舞園さやかがバラエティ系の演歌歌手として活動していただなんて、今さら公表できるはずがない! さやかちゃん本人ですら、今や何事もなかったかのように『デビューのきっかけは原宿でスカウトされたからです』と笑顔で語っているぐらいだ!」
「……少しだけ、舞園さんのファンになりましたよ」
「それゆえにごく少数のマニアの間では、演歌歌手時代のさやかちゃんグッズは幻の品といわれている! なにしろ現存するもののほとんどは今の事務所に買い取られているからな! そのタオルも然りだ!」
「これがですか?」

 安そうな生地に文字を入れただけのタオルだった。これぐらいなら最近のレタスの方が高いだろうと壬生は思った。
 
「壬生! お前は一体、そのタオルをどこで手に入れたんだ!?」

 すさまじい鼻息で詰め寄る紫暮に対し、淡々と壬生は答える。

「じつは会場の熱気で汗をかいたものですから、グッズ売り場でタオルでも買おうと思ったんです」
「そんなところで売っていたのか!?」
「いえ、あいにくタオルは全部売り切れでした。仕方ないので洗面所で顔でも洗おうと思ってロビーを歩いていたところ、前方から明らかにカタギではないと思われる集団が歩いてきたんです」
「ふむ。さやかちゃんファンにはそういった漢(おこと)も多いからな。なにしろ大きな声では言えない過去が過去だけに」

 ちなみに壬生も紫暮も知らないが、彼らは京都で緋勇たちと戦った若頭ほかである。

「そして彼らの先頭にいる男が封を切ってないタオルを持っていたので、僕は思い切ってそれを売ってくれないかと聞いてみたんです」
「お前、そういう連中に対しては人見知りしないんだな」
「けど、ダメだ、とすげなく断られました。なぜだ、と僕が問うと、どうしても、としか言わないんです。そこで僕は言いました。拳武館の義によって貴様たちに天誅を下す、と」
「いや、拳武館は関係なくないか?」
「いいんです。どうせ向こうも見た感じ悪そうな連中だったし」
「そうか」
「こうして僕は、流した汗をこのタオルで拭き、無事にリフレッシュしたというわけです」
「……まあ、相手がヤクザだろうと、奪ったのがタオル一枚だろうと、お前のやったことは立派な犯罪行為だが、あえてよくやったと言おう!」
「え、なんですか?」
「頼む! そのタオルを俺に譲ってくれ!」
「えぇっ!?」

 そういって、紫暮はその場で土下座した。
 誇り高き武道家の、突然の行動にさすがの壬生も動揺する。
 同じように、空手部の後輩たちの間にも動揺が走った。
 だが、一人、また一人と紫暮の後ろに膝をつく。自分たちの主将のために。

「壬生先輩! 我々からもお願いします!」
「どうか! どうか主将にそのタオルを!」
「お前たち………この、馬鹿野郎どもが………」

 漢(おとこ)たちも涙にむせぶ、なんとも熱い光景だった。
 これにはさすがに『イグアナよりも冷たい皮膚を持つ男』と呼ばれた壬生にも、思わぬ熱いものが込み上げてくる。

「けど、いやです」

 だが、それでもこの壬生の冷酷な切り返しっぷり。
 さすがはイグアナよりも冷たい皮膚を持つ男、と紫暮は驚嘆した。

「なんかいやじゃないですか、自分の汗の染みこんだタオルを人に譲るのって」
「いや、だから違う! お前の汗が目当てじゃないんだ! そのタオルに価値があるんだ!」
「でも、なんかちょっと……」
「頼む! 本当にこのとおりだ! 俺にそのタオルを譲ってくれ!」
「じゃあ、洗ってからあげますよ」
「いかん! その安っぽい素材を見ろ! 洗濯機で洗えばすぐにプリントがはげてしまう!」
「だけどこんなものをクリーニングに出すなんて、もったいないし」
「そのくらい俺が出す! だから平気だ!」
「いやですよ。だって僕の汗の匂いがしますから」
「そんなこと俺は気にしない! ていうか、女子か!」
「世の中の男が全員体育会系だと思ったら大間違いです。僕は絶対に自分の汗の匂いがするものを預けるのはご免です。まったく、これだからアイドルオタクは気持ち悪いんですよ」
「なんだと……?」

 ゆらりと紫暮の体から怒りのオーラが立ち上った。
 言ってはならぬ言葉を、壬生は言ってしまったのだ。

「俺は気持ち悪いアイドルオタクなどではない! 気持ち悪いさやかちゃんオタクだ!」
「そこなんですか、逆鱗は」
「いいだろう。お前がそこまで頑なに拒むのであれば仕方あるまい。これで白黒つけるか……」

 そういって紫暮は空手着の胸元から何かを取り出した。
 意外にも、それは符咒バトラーの聖器───GBAだった。

「えぇ!? それは……ッ!?」
「驚くのも無理はない。お前も、まさかこの俺がGBAを持っているとは思わなかったのだろう」
「というよりも、まさか、よりにもよってミルキーピンクのGBAを買っちゃう人がいるなんて……」

 確かに紫暮が持ってるGBAのカラーはミルキーピンクだった。
 しかし今の壬生の発言はあくまでも壬生の個人的な偏見にもとづくものであり、この場を和ませるジョークとして、あえて男らしいイメージの紫暮とミルキーピンクというファンシーカラーのギャップを強調したのであって、当然のことながら実際にミルキーピンクのGBAを所有する個人または製造・販売元の企業等に対して向けられたものではなく、そういった方々とはまったく無関係な発言であることは言うまでもない。

「ですが、深くお詫びします」
「いや、いいんだ。そんなこと誰もまったく気にしていないし、なんともたわいのないジョークだとむしろ微笑ましく思ったぞ。それよりも、これで俺と符咒で勝負しろ! そのタオルを賭けて!」
「この僕と符咒バトルですって?」

 意外な申し出だった。そもそも紫暮がGBAを所有していたことも意外なら、符咒封録を知っていることも意外だった。
 武骨で男気あふれる紫暮が、携帯ゲームをたしなむなんて。
 だが、たとえ相手が誰であろうと符咒バトラーが勝負を避けることはない。壬生は静かに頷いた。

「よし。では、通信ケーブルを挿せ」

 紫暮がひらりとケーブルを投げてよこした。その慣れた動作に壬生は違和感を覚える。
「まさか紫暮さん……こうした対戦をよくされるんですか?」
 紫暮は「うむ」と頷いた。それもまた壬生には意外な話だった。やはり紫暮が誰かとちまちまGBAで対戦しているイメージがどうしても湧かないのだ。

「ドッペルとな」

 イメージが湧いた。少し悲しい光景だった。

「言っておくが、対戦経験ではおそらく俺の方がお前よりも豊富だろう。だから遠慮などいらぬ」
 確かに、友人が少ないので通り魔的に勝負を挑んだりしている壬生よりは、紫暮の方がやんわりとした対戦経験を積んでいるだろう。
 紫暮がGBAに不慣れだという先入観は捨てて勝負に挑むべきだと壬生は思った。
「あと、対戦する前にこれだけは言っておく」
 そして、次に紫暮が放った言葉が、さらなる混乱へと壬生を追い込む。
「俺のデッキは名付けて『さやかちゃん親衛隊』──俺、霧島、京一、アラン、劉を中心に構成した野郎デッキだ」
「なんですって!?」
 それは、符咒バトルの常識を破壊するに等しい行為だった。自殺行為とも言えるものだった。
 符咒バトルとは、互いのデッキの弱点を読みとる心理戦だ。ドローの運を除けば、デッキ編成こそが勝敗を分けるカギである。
 そのカギを最初に相手に預けてしまう人間など、壬生は聞いたことがない。
 今の紫暮の言葉が本当なら、彼のデッキの特徴は『陽』に偏り、人物符が多くて、しかも物理攻撃がメインということになる。それに対応できるデッキなら5、6パターンは壬生の手持ちにあった。
 しかし、それでいいのか。本当に紫暮の宣言を信じていいのだろうか。
 壬生は疑いの気持ちを抑えることができない。あるいはそれこそが彼の思うつぼなのか。
 紫暮とはそれほどの対戦巧者なのか───、いや。

「包み隠すことなどないだろう。デッキは自分の情熱の現れ。さやかちゃんを護りたいという気持ちこそが、俺のデッキだ」

 そういう漢(おとこ)なのだ、紫暮という人物は。
 正々堂々。嘘偽りの駆け引きなど入る余地はない。
 だが、そういう紫暮の態度こそが壬生にとって脅威となる。
 意外な先手を打たれてしまい、得意のネチネチとした卑怯な攻撃が出せないのだ。

「いいでしょう……。ただし、僕は自分のデッキを明かしませんよ」
 相手のペースに合わせるつもりはないことを強調しておく。この時点で、符咒バトラーとして壬生が打てる手はそれだけである。
「あぁ、かまわんぞ。もとよりそんなつもりはない」
「さすが我らが主将!」
「かっこいいッス!」
 だが、それすらも状況は紫暮を押し上げる。
 嫌がる壬生からタオルを取り上げるための試合なのに、まるで壬生が悪者のような構図になっていた。
 今日はまだ、それほど壬生も悪いことはしていないというのに。
「はじめますか───」
 壬生にしては珍しく焦りをにじませる声だった。


  バトルスタート!


「うむ、先手は俺からだな」
「ナイスドローです、主将!」
「押せ押せーー!」
「キャプテン、Cooool!!」

 『鎧扇寺高校』(火)

「「うおおおおおーーー!!」」

 紫暮の方は後輩達の大声援の後押しを受けている。
 符咒バトルには似つかわしくない騒ぎに壬生は眉をひそめる。
(たかが土地符を一枚出しただけじゃないか……ッ)
 しかし、人気者の紫暮に対する嫉妬は壬生の集中を乱す。

「次はお前の番だぞ、壬生」
「……はい」

 『狂犬』

「うっぜー」
「てめえ、なに主将の土地符に乗っかってんだよ、黒メガネ黒コート!」
「犬なんか出してんじゃねーよ、黒メガネ黒コート!」
「Boooooo!!」

 なんともひどい罵声だった。
 壬生にしてみれば狂犬はうざくないと思えるし、黒メガネが名字で黒コートが名前みたいな呼ばれ方もいやだったし、部員の中になぜか1人だけ外国人がいるのもなんか気になって仕方なかった。
 しかし、それをかき消す大声で紫暮が部員を一喝する。
「お前たち! 試合中に汚い罵声はやめろ! それでも鎧扇寺高校空手部員か!」

 気の弱い人間なら紫暮の顔だけで失神してしまうだろう。じっさい、部員の何人かはその場に崩れ落ちた。
 それほど凄まじい叱責だった。
「すまなかったな、壬生。空手部を代表して無礼な振るまいを詫びる。このとおりだ」
「いえ……」
 堂々とした主将の態度に、部員たちの尊敬の眼差しは熱くなる。
「主将! 申しわけございませんでした!」
「せめて主将の応援は精一杯やらせてください!」
「フッ……好きにしろ、まったく」
「主将!」
「ありがとうございます、主将!」

 なんとなく、壬生にも紫暮が格好良く見えてきた。こういった体育会系のノリに不慣れな壬生にはどう対処すべきかわからない。洗脳されかかっているのかもしれないと壬生は思う。

「さて、俺のターンだな」
「行け行け主将!」
「主将、ファイトっす!」

 『道場』(火)
 『二重身』

「「うおおおおおおーーー!!」」
「「いいぞ、いいぞ、主将!」」
「「押せ押せ、主将!!」

「ぐっ……ッ!」
 圧倒的な声援だった。東京都都民の健康と安全を確保する環境に関する条例第133条(夜間の静穏保持)違反により、拳武館の義(社会的または肉体的制裁)を示そうかと思案するくらい、壬生にとってこの声援はプレッシャーとなっていた。

 元来、符咒バトルとは孤独なものである。対戦ケーブルを通じ、互いに向き合うことなくGBAの小さく見づらい画面を向いて行われるものである。個と個のぶつかり合い。しかも限定された環境の中でのことだ。
 集団競技のような団結や協調性などのファクターはそこにはなく、それゆえに壬生のような孤独を好む男に愛されている。
 衆人環視のもと、しかもそれがすべて敵陣営という完全アウェイでのバトルは壬生にとっても初めてのことだったし、おそらく小学生のイジメのメニューの中にだってこういうのはないだろう。
 おそらく紫暮自身もまったく意識していなだろうが、まさに壬生にとって最も苦手な状況が作り出されている。相手のペースにはまることを避けてきた壬生だが、正々堂々と迫ってくる紫暮の前に精神的に追いつめられていた。
(こんなにやりづらい敵は初めてだ……ッ!)
 符咒バトルとは、デッキを通じた魂の格闘戦。だが、デッキよりも先に自分自身が摩耗してしまうこともある。
 むろん、壬生にとっても初めての体験だった。そもそも相手を精神攻撃しながらゲームを進めるのは、壬生が最も得意とした戦法だった。
 このような形で自分が追い込まれるとは。そしてその相手がまさか紫暮だとは壬生も思いもよらなかった。
 ここまで自分を追い込んだのは紫暮が初めてだった。
 まさに───符咒バトラー、最大の危機!

「ぐ、はッ!?」
 今、壬生の『狂犬』が紫暮の『二重身』の前に敗れ去った。大喝采が相手側応援席(?)より沸き起こった。
 符として脆弱な狂犬は、序盤の時間稼ぎに用いたにすぎない。
 だが、壬生自身の受けたダメージは決して小さなものではなかった。戸惑いが精神の防御壁を弱くしているのだろうか。だとすれば、今はこれ以上の人物符を出すべきではないのかもしれない。
 法術符などで時間稼ぎをするべきか───、そう考えながらも、壬生は自分の戦略が消極的に陥っていることにも気づいている。

「壬生……お前のターンだぞ」
「どうしたどうしたー!」
「早くしろー!」 

 ぐるぐると考えはまとまらないまま、手早くAPを稼ぎ、強力な人物符を出すべきと結論づけて『急激な成長』にカーソルを合わせた。
 普段の壬生では考えられぬほど短絡的な戦略だ。しかし今の壬生には、ただ勝負を進めることしか頭になかった。
 符咒バトラーとして、逃げの思考である。
「くっ……!」
 壬生の手札から『急激な成長』が場に投げ出される。
 それは壬生にとって屈辱の一枚───になるはずだった。


 『急激な成長』


「なっ!?」
「……ッ!?」
「こ、これ……」

 だが、それに声を失くしたのは壬生ではなく、紫暮陣営の方だった。
 彼らの眼前にあるのは───体の急激な成長に服が裂けるマリィの図だ。
「……?」
 突如訪れた静寂に壬生は首を傾げる。紫暮はそっと画面から目をそらした。部員たちもソワソワと落ち着きをなくしている───まるで思春期の少年のようにウブな赤面を浮かべ。
(まさか……?)
 気になった壬生は、試しに手持ちの符から“それ”と思われるものを続けて放った。


 『見えざる手』


「!?」
「ぶはッ!」
「うわあああああッ!」

 それは明少年が美里や小蒔のスカートをめくって走るという、小学生ならでは問題行動を表した符だった。
 ちなみに効果としては敵のオープンになっている人物符を伏せるというものだが、その前に紫暮が顔を伏せた。灼けた鉄の如き赤面だった。
 それどころではない。
 後ろで画面を除いていた部員の数人は大量の鼻血を吹き出して失神し、残った部員もまともに画面を見られない有様だった。

「そ、そのような符は感心せんな……」
 しどろもどろの紫暮に、起死回生の機を見る壬生。
「さあ、紫暮さんのターンですよ」
「う……うむ」


 『符術士』


 さきほどまでは威勢の良かった部員たちも、遠慮がちな喝采を送るのみだ。まるでGBAの画面を恐れるかのように。

「次は僕のターンですね」

 びくり。
 壬生の言葉に大の男たちが体を震わせた。


 『水の従者』(水角)

「「ぐわあああああッ!?」」

 噴水のような鼻血が東京の夜景をバックに次々と天に向かって吹き出し、ドミノを崩すように空手部員たちが倒れていく。
「ぐ、負けるかぁ……ッ!」
 その大惨事の中にあっても、さすが紫暮は一筋の鼻血を落とすだけでその場にこらえていた。しかし、こめかみ浮かぶ血管と顔色はぶるぶると色を変えていく。生き残った部員がその背中を必死で支えている。ぎりぎりで立っている状態だった。
「これほどの威力を発揮するとは───、自分でも驚きです」
「なんという……なんというHな符を使うのだ、お前は……」
「それは聞き捨てなりませんね。あなたも符咒封録を買うときに見たはずです。パッケージ右下の『全年齢』マークを。この程度の符など、お子様でも安心してご覧頂けるレベルだと認められているのです」
「そうだな……いったい何を基準とするのか、消費者は誰も知らないシステムだが、認められているのは確かだ……」
「どうしますか? 降参するなら今のうちですよ?」
「な、なんのこれしき───」


 『薔薇の妖女』(藤咲亜里沙)


「「うっぎゃあああああッ!?」」

 紫暮の背中を支えていた部員たちが、スタンド攻撃でもされたかのように吹き飛ばされていく。

「ぐおおおおおおッ!!」

 だが、紫暮は両足を地面にめり込ませ、なんとかその場に踏み止まっている。空手着はびりびりに引き裂け、こめかみの血管から血が流れているが、それでも気合いとともに全身の筋肉を硬直させ、仁王の如く立ちはだかっていた。
「さすがですね……紫暮さん」
 なにがさすがなのか壬生にも分からないが、とにかくこの攻撃によって返ってくる豪快なリアクションに、壬生のテンションも急上昇だった。
「僕のセクシー符攻撃に、ここまで耐え抜いてのは貴方が初めてですよ」
 ただし、このような攻撃が通用する相手も初めてであった。
「フッ……この俺も、中年と呼ばれた高校生だ。この程度のお色気で根を上げてたま───」


 『香る湯煙』(入浴中の涼浬のレア符。句会で入手可能)


「って、人が喋ってる最中に何を出してるんだお前は〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」

 全身の穴という穴から霧状の血を吹き出して、紫暮の巨体はゆっくりと倒れていく。
 こうして漢(おとこ)の夢は、無惨な形で潰えてしまった。
 純情とは、それほどの罪なのだろうか?
 だが、夜の摩周湖を思わせる霧のように幻想的な出血と、ビルの静寂に木霊する断末魔の叫びは、1人の漢(おとこ)の最期を飾るには、美しすぎるとすら壬生には思えた───。

 

「───紫暮さん」
 紫暮は、いつのまにか自分が植え込みにもたれる形で、上体を起こされていることに気づいた。
「壬生、か……」
 見渡せば、他の空手部員たちも一応の介抱はされているようだった。
 全員、鼻にティッシュを詰められていた。
「すまない。面倒をかけたな」
「いえ」
「……俺は、負けたか」
「はい」
 きっぱりとした壬生の物言いは、かえって清々しい気持ちにさせてくれる。
「符咒封録はGBAのソフトでありながら、これをきっかけにゲーム・ボーイを卒業させかねないほどにアダルトなソフトでもあります。そこに目をそらしてしまっては、真の符咒を知り得ることはできません」
 容赦ない壬生の物言いにも、紫暮はただ「そうだな」と頷く。
「残念だ」
 そう言いつつも、満足げな笑みだった。彼の病的な純情を、壬生は惜しいと思えた。
 取り繕うような笑みを壬生は返して、わざとらしいため息をつきながら紫暮に背を向ける。
「ふぅ、無駄な時間を食ってしまいましたね。おかげですっかり遅くなってしまいましたよ」
「あぁ……すまんな、俺たちのことならもう───」
「夜風ですっかり汗も引いてしまったので、このタオルも不用になってしまいました」
 そういって、背を向けたまま壬生はタオルを紫暮の足下に落とす。
「血だらけで帰るわけにもいかないでしょう? それと、あなたの血で汚れたタオルなんて、返す必要ありませんから」
「なッ……?」
「それじゃ」
 軽く片手を上げて、振り向きもせずに壬生は歩き出す。
 あとには夜の静けさだけが取り残される。

「壬生……」
 漢(おとこ)は漢(おとこ)を知るという。
 本気の戦いを経て、漢(おとこ)たちの友情は鉄を鍛えるかのように熱く堅いものとなるだろう。
 だが、それゆえに───。
 それゆえに、紫暮には壬生に伝えなければならないことがあった。

「待て、壬生ッ!!」
 
 およそ120デシベル(飛行機のエンジンくらい)の大声で呼び止められ、壬生は心臓を吐き出しそうになった。

「な……なんですか?」
 おそるおそる振り返る壬生に、紫暮は苦渋に満ちた表情を見せる。
「お前は強い。とてつもなく強い。その腕一つで、これからも戦い続けるのだろう」
「えぇ、まあ。他にこれといった趣味もありませんし」
「ならば、お前に俺の知っていることを伝えておかねばならん。お前には酷なことかもしれないが、聞いてくれ」
「聞いてあげます」
「お前は強い……だが、世の中にはお前よりも強い漢(おとこ)がいる」
「なんですって? この僕よりも? 何を馬鹿な──」
「……お前、村雨と戦ったことはあるか?」
「!?」
 村雨祇孔。
 ギャンブラーとして高校生でありながら世に知られ、あらゆる賭博において最強の名を欲しいままにしている天才賭博師。
 かつて蓬莱寺京一をパンダパンツになるまで痛めつけたことでも有名である。
 彼の名を聞いて、壬生は自分の予感が正しかったことを悟った。
 やはり、彼もこの符咒バトル界にも来たか───。
 いずれ彼の噂を聞くだろうと思っていた。
 そして、彼が自分にとって最強の敵となるだろうことも……。

「あの村雨を、1秒で破った男がいる」
「なんですってッ!?」
 今度こそ、壬生は心底から驚愕した。
 村雨の名を聞いただけでも十分な驚きだったのに、その村雨はすでに破られているという。
 しかも、たった1秒で。
 どのような技をもってすればそのような秒殺が可能なのだろうか。
 1秒。たった1秒で───。
「って、1秒なら先攻後攻も決まってないじゃないですか」
 それどころか、あの無駄に長いオープニング前のメーカー・クレジット(ロゴ)表示も終わってないだろう。
 だが、紫暮は青ざめた表情で首を振る。
「……あの男は悪魔だと言う者もいる」
 まるで幽霊を見たかのように紫暮は怯えていた。
「ヤツの発するプレッシャーはお前の比ではないらしい。ケーブルすら繋げずに倒される者もいるという。ヤツもまた、ケーブルを差しただけで相手の力量が分かるとまで豪語してるという」
「……ハッタリとしては、面白い方だと思います」
「しかし強いのは本当らしい。もちろん、じっさいに村雨が何秒で破れたかなど俺は知らぬ。だが、それぐらい圧倒的な破れ方だったのは確かだ」
「圧倒的とは?」
「村雨は……ヤツと戦って、精神崩壊してしまった」
「えッ!?」
 確かに、符咒封録が死と隣り合わせの危険なゲームであることは誰もが知っているとおりである。
 だが、まさか村雨をそこまで追い込む男がいるとは。
「そして俺は、村雨に会いに行った。最強の男との戦いとは、如何様なものであったかと」
「えぇ。それで?」
「……ろくに話もできない状態だった。ただ一つの言葉を繰り返すだけだったよ」
「なんと?」
「───符咒の地獄を見た、と」
「!?」

 一体、何がどうなっているのか、壬生は混乱するばかりだった。
 村雨が符咒バトルに参戦していた。そして、自分にたどり着く前に、無惨な破れ方をした。
 地獄を見たというほど、無惨な敗北を。
 誰がそんなことをできるというのか?
 壬生自身に、そこまでの戦いができるだろうか?
 いや、無理だ。あの村雨を強運をねじ伏せるほどの《力》を持つ者など───。 
「しかも相手は俺たちもよく知っている男だという。その男の名は……」

「……緋勇龍麻」

 答えは、壬生の口から出てきた。
 紫暮はまるで不吉な言葉を聞いたかのように顔をしかめ、「そうだ」と頷いた。
 緋勇龍麻。
 名前だけで、壬生にこれほどの恐怖を与える男など他にはいない。
(龍麻が───)
 彼のことを考えるだけで、壬生の背中に嫌なプレッシャーがのしかかる。
 最強、最大の敵とは───身内とも呼べる兄弟弟子。そして、一度は自分を武で破った男だった。

「……壬生」
 ふと、紫暮の声は優しげなものに変わった。
「凡人には凡人の生き方がある。それを俺は恥ずかしいことだとは思わん」
「……なんのことですか?」
「龍麻に勝負を挑まれることがあっても、決して相手になるな。逃げることだけを考えろ」
「!?」
「世の中には、運や努力だけでは追いつけないものもある。それは本人以外の多くの他人にとって、羨望の対象となり、ときには恐怖になる。お前が龍麻に感じる恐怖も、その得体の知れないヤツの《力》のせいだろう。いや……お前だけはない。俺や、多くの者がヤツの《力》を恐れている」
「………」
「俺は──、壬生、お前にまで壊れて欲しくないんだ。符咒ぐらい、いつでも俺や他のヤツが相手になってやる。だが、龍麻だけはやめておけ。俺と……約束してくれ」

 ───静かな夜だった。友の情が深く染みいる夜だった。
 紫暮の言いたいことも分かる。仮にも武に生きる男が、勝てないから逃げろ、と語るその心の痛みも。
 それが利口なやりかたなのは違いない。嵐が吹き荒れているときは誰だって逃げる。息を潜めて嵐が通り過ぎるのを待つ。当たり前のことだ。
 そう、だから壬生も───。

「……ククッ、クククッ」
「壬生?」
 しかし、壬生紅葉は笑った。
 それは恐怖ではなかった。歓びの笑みだった。
 符咒の狂気に取り憑かれたように壬生は笑う。

「いいでしょう。僕はいずれ最強の称号も持って立ちはだかる男を待っていました。その相手が龍麻なら、不足ありません」
「壬生、お前……?」
「思っていたより、ずっと早かったですね。こうして誰彼構わず勝負を挑んでいたのは、いつかはそういう相手に巡り会えると思ったからです」
「まさか、お前! 龍麻と戦うつもりか!?」
「もちろんですよ。僕に逃げろですって? 冗談じゃありません。僕が目指すのは最強───。僕が戦うのは、符咒バトル最強となるためです」
「……どうしても行くというのか?」
「ええ」

 深く頷いた壬生の目に狂気の色はなかった。
 そこにあるのは、覚悟と探求心。最強への渇望。笑みには冷酷な歓喜すら含んでいる。
 あくまでも最強を求めるのみ。それが符咒バトラーの悲しき性なのか。
 紫暮はもう壬生を引き留めることはできないと悟った。
 自分にできるのは、この強敵(とも)の旅路が無事に終わることを祈るのみ。
「……紫暮さん」
「あぁ」
 さらば強敵(とも)よ、と小さく紫暮は呟いた。
 壬生は彼に背を向けた。
 行く先には、どこまでも深い闇が待ち受けている。だが、彼は踏み止まらぬだろうと紫暮は思った。
 壬生の野望はすでに見果てぬ未来へと歩み始めているのだから。
 たとえどれほど険しい道でも、乗り越えていく漢(おとこ)なのだから。
 紫暮の目に映る壬生の背中は、どこまでも気高く、孤高の美しさを誇ったまま───

「バッテリーが切れそうだから、今日のところは帰りますけど」

 逃げた。

 

 

次回予告


 怪人のようなマントに、ど派手なパピヨンマスク。
 新たなる戦いのステージを前に立ちはだかる、感性のおかしな男。
 だが、その男を相手に符咒バトラーはまさかの敗北を喫してしまう。
 全てを失った壬生に救いの手は差し伸べられるのか?
 符咒バトラーを追い込む『特別ルール』の秘密とは?
 そして彼に初めての敗北を与えるパピヨン男の正体とは!?


 次回『携帯電脳遊戯最強伝説 符咒バトラー壬生!』第4話


  「いい大人がなんて格好してるんですか、館長」


 つづく!

 

 


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